2018年3月31日土曜日

【歩んで舞る。】episode Eight

2018年4月28日(土)黄昏れ時。
野々宮神社で舞う公演の目的は、

現代舞の踊り手による新しい「舞」表現を、
森林に囲まれた神社という特有の歴史文化、
ならびに自然環境を背景に新しい「舞」を発信すること。

その現代舞ならび新しい「舞」表現とは。

若年であり、まだ未熟極まりない身として
「新しい舞表現」を公開するということは
少し厚がましいようなきもするけれど。

ただ、ここ数十年のダンスライフで自分なりに見えてきた到達地点(通過点)
を全身全霊全力をもって一つの舞台作品として創造すること。
それは一つの大いなる挑戦だと、勝手ながらにも思っております。

輸入文化としてのストリートダンスからスタートし
日本人としてのアイデンティティを改め問い直し
己が持つ身体による唯一無二な身体表現を見出すこと。

すなわち能や暗黒舞踏に次ぐ、日本オリジナルのダンスを生み出すこと。

伝統芸能を融合させた現代神楽のような【 伝統×現代 】的な踊りをすることではなく、

【 全く新しい舞表現 】を創造することを目指しています。

今日までのダンスライフは偶然の連続でありつつ
一つの流れが出来ていることは間違い無しと感じております。



14年前。18歳のころ、ニューヨークへと留学。
いわゆるストリートダンスの本場へと我が身を投じた時期。
18年間住んで来た実家を出て、
初めて一人身として住んだ町がニューヨークブルックリン。

留学前に日本にあるホームステイ紹介の会社に半ば騙されたかの如く。
ホームステイ先は、ニューヨークでも三本の指に入るゲットーエリア(治安の悪い場所)
地下鉄2番線の終点 Flutbush avenue。ブルックリンの末端。
当時は、東洋人は一切いなかった。完全に黒人街だった。
留学先であった学校まで地下鉄に乗って片道二時間。

このホームステイ先、朝食付きというのはいいが
出てくる朝食はデリの片隅に積もられている極めて薄っぺらいカリカリのパン一枚。

ワンモアプリーズと言うと、黒人のお母さんに激怒される。

ホームステイ先にていきなり受ける人種差別。

そもそも人種差別されること自体、人生初めての経験であったため
なぜホームステイ先の家族は俺のことをウザがっているのだろう。。。
目つきが悪かったのか。。。いや、そんなに悪くなかったはず。。
平和そのものの日本から来た18歳の少年には
人種差別の認識さえ出来ずにいた。

ただ今思えば、かつてのニューヨークでは
白人が黒人を差別化し、黒人が黄色人種を差別化していた。
少なからずとも、ブルックリンFlutbush avenueエリアで
相当な人種差別を受けた。

住み始めて二ヶ月ほど経ち、
ストリートダンスという黒人が生み出したダンス文化に憧れ
留学したにも関わらず黒人から受ける人種差別。

当時、ニューヨークに住んでいた日本人の多くが‘黒人’というだけで
なぜか無条件に憧れる。

「やっぱ黒人のリズム感は違うよねー。はんぱねー。」

分かるけどさ、俺等だって同じ人間だ。

俺だって黒人が生み出したストリートダンスを追求してニューヨークに来た。
ただ、「ストリートダンス」というダンス文化に憧れたのであって、
黒人という人種に憧れているわけではない。

というか肌の色は違うけど、同じ人間じゃん。
文化を創るのは特有の地域ならび人種であるかもしれない。
ただ、ストリートダンスというのはグローバルなダンスジャンルだ。
いわゆる民族舞踊的価値観ではない。

という感じで、居住エリアで受ける人種差別の傷のせいか。。。
それまで純粋な18歳の少年の目つきが、悪くなりはじめてしまう。

最終的に、自分にとっての踊りが純粋に「楽しむ」行為から
「戦う」ツールに変換してしまうことがおきる。

マンハッタンからの帰り、
Flutbush avenueに着くまでの地下鉄の長い時間。

それまで車両にいた白人から東洋人が少しづつ居なくなる。
それに変わり、少しずつ黒人が増えてくる。

向こうの車両から、
黒人学生(たぶん高校生ぐらいだろう。)男性6人がスピーカーを手に持ち
こっちの車両に乗り込んでくる。

なんだか嫌な予感がして下を向いて寝たふりをする。
嫌な予感は的中。

彼らにとっては珍しい東洋人B-Boy。
当時はバリバリのストリートダンサーであったため
ファッションもダボダボストリートファッション。

きづけば囲むように彼らが座っている。
そして、俺のかぶっているメッシュキャップを頭から取り上げ
げらげら笑っている。

俺はそれでも寝たふりをする。
大切にしていたメッシュキャップはどこかに投げられ
彼らは俺にもたれ何だかクッチャベっている。

ただただ悔しい。
悔しくて叫びたいけれど、コワくて動けない。
むしろ震えているのは悔しさではなく恐怖からだった。

その恐怖に震えている自分自身にも情けなく
そして、こいつ等が本場としているヒップホップファッションをしている
自分自身にも恥ずかしくなってくる。

なんとも言いようのない感覚にひたすら襲われる。

きづけば終点、Flutbush avenueに着いていた。

こいつらは降りない。
ひたすら俺のことを見て笑っている。

俺は目をつぶりながら、その笑い声を聞いていた。

意を決して、席から立ち車両から出ようとした。

車両からでる直前、数は明確に覚えている。

6回だ。

一人ずつ、俺の後頭部を叩いた。
最初の三回目ぐらいは痛いのと驚きで、ただ固まった。
残りの三回で、完全に頭の中の何かがキレた。

「黒人をバトルでぶっ倒す。」

その日から、黒人ならびアメリカ人をバトルで倒すことだけをイメージしながら
一日10時間以上の、今思えば完全にイカれたダンス修行が始まる。



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